A:【案件】
2008年2月に袁さんは上海の警備サービス会社で勤務を開始し、警備業務を始めました。約定した月給は3,000元で、双方は固定期限の労働契約を何度か更新しました。最終の契約期限は2017年2月28日までです。会社の「従業員手帳」に、従業員の無断欠勤一日につき、会社は三日分の減給を与えることができるという規定があります。袁さんは「従業員手帳」を受領して受取署名をし、異議は提出しませんでした。
2015年7月、袁さんは家庭の事情で会社に休暇申請することなく故郷に帰りました。2015年7月27日から7月31日までの期間無断欠勤しました。会社は2015年7月31日に会社規則制度に対する重大な違反を理由に袁さんの労働契約を解除しました。2015年9月、袁さんは家庭の事情が解決したため、会社の離職手続きを開始しましたが、2015年7月分の給与額について会社と協議合意に至らず、袁さんは上海市某区の労働人事争議仲裁委員会に仲裁を申請しました。袁さんは会社に対して2015年7月給与として2,483元を支払うように要求しました。(3,000元/21.75×実際勤務18日)
【裁判結果】
仲裁委員会は審理を経て、会社が2015年7月給与を袁さんに支払っていないことを認定し、会社には労働者に2015年7月分給与を支払う義務があるとしました。金額についての仲裁委員会の認識は、1、会社は従業員手帳が法的な民主プロセスを経て制定されたことを十分に示す証拠を提出していない、2、無断欠勤一日で三日減給とする規定は法律規定に違反しているため、会社の抗弁理由を仲裁委員会は採用しない。というものでした。最終的に裁決は会社が袁さんに2015年7月給与2,483元を支払うように命じました。
【弁護士コメント】
まず、「労働契約法」第四条規定に基づき、雇用単位が「従業員手帳」等の規則制度を制定する場合には民主プロセスを経なければなりません。
次に、現在の司法手続きにおいて、いかなる規定についても民主プロセスを経てはじめて従業員に対して適用することが可能です。
司法機関が無断欠勤一日につき三日減給という規定を支持しなかったロジックは以下の通りです。従業員無断欠勤一日で減給できるのは一日の減給のみ。しかしながら、会社が減給した残りの二日分は従業員の正常給与に対する給与であり、労働者給与の上前をはねたことになる。
同時に、この規定が会社にもたらすリスクは二日分の給与差額を補填するだけの問題に留まりません。「労働契約法」第38条規定に基づき、雇用単位が満額の労働報酬を支給しない場合、雇用単位の規則制度は法律、法規の規定に違反して、労働者の権益を損なっているとみなされ、労働者は労働契約を解除することができ、且つ経済補償金を要求することができます。
本案件に戻れば、会社は実際のところ別のもっと効果的な方法で労働者に懲罰を与えることが可能でした。例えば、会社は「従業員手帳」に当月中従業員に無断欠勤があった場合当月の業績賞与を80%の支給にする、あるいは当月の皆勤手当を控除すると規定できます。このような規定は無断欠勤一日で三日減給という規定よりもずっと合理性があり、司法機関が認める可能性がもっと高いものです。