労務派遣暫定規定》施行1年が経った2015年末に公表された、上海市の《派遣規定》施行後の課題に関する会議要項では、違法派遣、業務委託等に対する高等法院の判断が公表されています。主要なポイントは下記;
労務派遣会社の行政許可の過渡期
労働契約法修正決定》(略称《修正決定》)に定められた労務派遣会社の正規行政許可取得の過渡期期間1年が終了し、行政許可のない労務派遣会社の新規派遣業務は認めない。公布から施行までの期間(2012.12.28~3013.6.30)に締結した労務派遣契約は満了まで継続可。

労務派遣会社行政許可取消、更新不可
許可取消または更新不可であった労務派遣会社との既に締結済みの労働契約/派遣契約は派遣期間満了まで継続可。

③行政許可未取得の労務派遣会社との契約
派遣協議の無効判定までは、派遣会社/使用企業/労働者の3者は原契約・実質履行の内容に基づき確定することができる。使用企業は《労働契約法》【第40条-3】(契約締結時の客観的状況の変化)に基づき契約経済補償金を支給し使用関係を協議解除することができる。

④違法派遣 NAVI
三性(臨時性、代替性、補助性)、派遣労働者比率(10%以下)の規定は派遣会社または使用企業の義務である主体的管理性規定であり、違反した場合も派遣協議/労働契約の効力には影響しない。三性、派遣比率に起因する争議は《労働争議調停仲裁法》(略称:《調停仲裁法》)に規定する労働争議案件として受理しない。当事者による労働契約/派遣協議の無効の確定、労働者による使用企業との労働関係の確定は法的根拠に乏しく支持しない。

⑤同一労働同一賃金
派遣労働者直接雇用労働者の同一労働同一賃金に関わる問題は労働監督部門が法規に基づいた改正指導を実施する。《調停仲裁法》は労働報酬争議として労働争議処理機構が法に基づき処理する。

労務派遣会社への“差戻し”可能な状況  NAVI
《派遣規定》に列挙した①契約締結時の客観的状況の変化/人員削減条項に合致する差戻し、②企業の清算時の差戻し、③労務派遣協議期間の満了、以外に労働契約法労働契約法解除事項に合致する場合は派遣労働者の派遣会社への差戻しは可能。

⑦“差戻し”後の再派遣
合法な“差戻し”後、労働者が合理的な再派遣に応じない場合、労働契約、就業規則、関連法規に基づき処理できる。

⑧“差戻し”根拠に関わる争議
差戻しの根拠が不十分であり、かつ労務派遣会社が合理的な期間(一般的に1ヶ月)内に新たな派遣を実施しない場合、労働者は労働契約を解除し経済補償金を享受することができる。

⑨使用企業/労務派遣会社/労働者3者の権利義務の紛糾処理
労働者と派遣会社または使用企業との間の労働争議は《調停仲裁法》に基づき派遣会社、使用企業を共同当事者とし、個別に法的責任を確定する。使用企業が労働者に損害を与えた場合は派遣会社と使用企業は連帯賠償責任を負う。

⑩《修正決定》施行以前に締結された労働契約/派遣協議
《修正決定》施行以前(2013.6.30以前)に締結した労務派遣契約は満了まで継続可。ただし、同一労働同一賃金は法規に基づき修正すること。

労務派遣業務委託(HRサービス アウトソーシング)の区分 NAVI
業務委託(HRサービス アウトソーシング)は市場動向により出現した新たな状況であり、労務派遣
から業務委託への転換過程における法律関係、管理権調整は複雑である。
・労働争議案件における労務派遣業務委託の区別に関わる問題は、就業規則の活用、使用企業の指揮
 管理権の強弱の程度等の要素により総合的に判断する。
業務委託元が消防、安全生産、製品サービスの質、業務場所の秩序等を管理を必要とし、委託先労働
者に対して部分的に指揮管理権を行使する場合、労働争議処理機構はケースごとに慎重に処理し単純
法律関係による改変(=契約関係の変更)のみで判断を下さない。
業務委託(HRサービス アウトソーシング)の委託元と委託先は協議により合理的に具体的な管理範
 囲を確定することができる。
業務委託契約が無効と判断されない状況の場合、委託元による委託先労働者への部分的な越権指揮は
 修正しなくてはならない。労働者がこれをもって労務派遣であると主張する事、または委託元との労
 働関係の存在(=直接雇用)の確認を求める場合、法的根拠の欠如により、法的支持はしない。

NAVI
労務派遣暫定規定》では派遣可能職務(臨時性、代替性、補助性)のうち、補助性職務は「主要業務をサポートする非主要業務」としながらも、「補助性職務で使用する場合、工会あるいは従業員代表と協議決定し、企業内で公示すること」とされており、実質的に企業毎に決定可能とされています。
政策の意図とは異なり、日系企業では、労務派遣契約の継続を希望する無固定期間労働契約の古参従業員の直接雇用移行が課題となっている状況が散見され、補助性職務の活用が検討されています。三性の判断でもめた場合も、労働仲裁では取り扱わないと明言されていることは、補助性職務の活用の柔軟性を高めるものと思われます。

 

NAVI
本会議要項では、労務派遣労働者の“差戻し”(退回)に関わる問題に多くの文言を割いています。《労務派遣暫定規定》で労働者保護強化を目的としており、規定施行を理由とした派遣労働者の“差戻し”を禁じていますが、“差戻し”に関わるとトラブルが多発しているものと思われます。本会議要項⑥では、労働契約解除不可状況の差戻しを再度禁じており、労務派遣を臨時性、代替性で活用する場合も、女性が妊娠した場合は労務派遣契約を満了することができず、第二子の出産が増えていることからも、女性の短期労働者の確保が企業の課題となっています。

 

NAVI
流動性が高く募集、人事管理が煩雑な労務派遣工、労務派遣販売員等の使用契約を業務委託契約へ切り替える動きがありますが、日系企業では、日本同様、偽装請負と判断されるリスクが課題となっています。
本会議要項は、新たな業務委託による労働者使用への過渡期において、業務委託の場合の労働者保護の視点から、使用企業が一定の労働者管理に関わることを認めるものと言えます。労働争議、安全生産体制の確保等は法的に雇用関係が無い業務委託であっても、委託元が責任を免れないとしています。
また、業務委託労働者が、委託元に管理される体制から、労働契約関係に疑義を持った場合も法院ではあくまで業務委託先労働者として取り扱うという姿勢が明示されています。

 

>>中文ページ