<現行試用期間の再設定は可能か?>
試用期間労働契約の締結後であっても、比較的容易に契約を解除でき、試用期間給与も適用することができるため、多くの企業様が試用期間制度を活用されています。しかしながら、この試用期間制度は法律に定められている事項であることから、法律をきちんと把握していないと思わぬ落とし穴が…。そんな落とし穴が待っていた事例をご紹介します。

【事例】
従業員:黄さん
労働契約期間3年、試用期間6か月の契約を会社と締結。
入社から4か月後に会社は試用期間中の成績を理由に、労働契約の解除を通知。
→黄さんは是非とも会社に留まりたいと主張、会社が根負けし、試用期間の再設定を提案。
・下記の協議に双方が合意
1.双方は現時点から更に半年の試用期間を再度約定する。
2.この試用期間中に会社が求める基準に達しない場合は、会社は労働契約を解除できる。
入社から8か月後(再度約定した試用期間中)会社は黄さんが試用期間中の査定に不合格であることを理由
に黄さんとの労働契約を解除。
・黄さんは納得せず、区労働争議仲裁委員会に仲裁を申し立てた。

【双方の主張】
黄さん
労働契約法』の規定では試用期間は最長6か月。この協議は法律規定違反で、無効。

そのため会社は試用期間中に会社が求める基準に達しないという理由で労働関係を解除することはできない。

会社
改めて試用期間の協議を締結済み。

この協議には双方の合意があり、詐欺や脅迫等も行われてはいない。それゆえ、この協議は法律的に有効である。

【結果】
労働争議仲裁委員会による審理を経た裁定は、会社が労働契約を解除した行為は『労働契約法』の規定に違反しており、現在労働者が要求しているように、双方は労働契約の履行を継続しなければならない。というものだった。

【解説】
労働契約法』19条は試用期間の期限に関して、法的基準期限を定めており、規定されている試用期間の上限は6か月です。これは労働者の合法的権益を保護し、雇用企業による試用期間の濫用を防止するための強制性のある法律基準であり、雇用単位が基準を超えて随意に試用期限を約定することは認められていません。
それゆえ、黄さんの試用期間の延長に対して、双方が協議に署名し、且つ詐欺や脅迫等も存在しない状況であっても、法律の強制性のある規定に違反しているため、当該協議は無効となります。
それゆえ、労働仲裁委員会が下した決定は法律規定に沿ったものと言えます。雇用企業はこの案件において不当な仕打ちを受けた、恩を仇で返されたと感じるかもしれませんが、これが現実です。ですから、企業に対して言えば、労働法律に関係する事柄を処理する場合には、法律規定を熟知し、情に流されないことが求められます。
コチは就業規則運用の適法性に関する相談も承っております。お気軽にご相談ください。

【参考資料】
労働契約法』第19条:「労働契約期間が3か月以上1年未満の場合、試用期間は1か月を越えてはならない、労働契約期間が1年以上3年未満の場合、試用期間は2か月を越えてはならない。3年以上あるいは無固定期限の労働契約の場合、試用期間は6か月を越えてはならない……。」