傷病休暇証明を持つ社員は解雇できないのか?>
 従業員の権利意識向上に伴い、傷病休暇の利用も増加しています。多くの企業では傷病休暇の申請に病院が発行する傷病休暇証明の提出を要求していますが、逆に病院の発行する傷病休暇証明があれば無条件で会社は福利を提供しなければならないのでしょうか?傷病休暇証明が決して錦の御旗ではない、そんな事例をご紹介いたします。

【事例】
 上海某社で勤務する章さんは、入社5年目の中堅社員で、現在2年間の労働契約を締結しています。この会社の『就業規則』には「休暇申請手続きを行なわない者、あるいは休暇申請書を提出しても承認を受けていない者が出勤しない場合無断欠勤とみなす。無断欠勤連続3日の者は解雇とする」という規定があり、章さんも『就業規則』を入社時に一冊受取っています。契約期間内のある時、章さんは腰のヘルニアと病院で診断され、15日の休暇が必要という傷病休暇証明が発行されました。章さんは会社に申請することなくすぐに自宅での休暇を開始しました。
 休暇を取得しはじめてから3日後、会社は電話で章さんに連絡し、「傷病休暇の申請がされていない。病気休暇申請を提出しなれば無断欠勤として処理する」と通知、章さんはその日に傷病休暇申請をしました。そして傷病休暇証明に記載された15日が経過した後、章さんは再び病院に行き、さらに15日の休暇が必要であるという傷病休暇証明が発行されました。章さんはまた自宅で休養しましたが、会社には連絡せず、病気休暇の申請も行いませんでした。この5日後、会社は章さんに、「休暇申請手続きを行なわずに無断で出勤せず、無断欠勤が連続3日に達したため、『就業規則』の規定に基づき解雇処分とする」という通知を送付しました。章さんはこれに納得せず仲裁を申し立てました。

【双方の主張】
章さん
章さんとしては自宅での療養は傷病休暇であり、無断欠勤ではない。
傷病休暇証明があり、傷病休暇が連続していることは会社も知っており、会社の解除は違法解除である。

会社
会社『就業規則』は休暇申請を条件に休暇を与えており、申請しなかった章さんは規則に違反している。

【結果】
労働争議仲裁委員会は章さんの訴えを支持しましたが、それに対して不服である会社は起訴し、一審二審を経て最終的に会社による労働契約解除は合法であり、最終月の給与を支払う必要はあるが、賠償金については支払う必要がないという判決が確定しました。
(出典:労働報)

【解説】
傷病休暇医療期間は密接に関連していますが、異なるものです。傷病休暇の長さは労働者の病状によって決まりますが、医療期間の長さは法定の基準があります。上海市政府発行の『労働契約履行期間中の罹患・非業務負傷の医療期間基準に関する規定』には、「医療期間」とは労働者が罹患あるいは非業務負傷により休息を取り、雇用者はそれにより労働契約を解除してはならない期限である」。労働者が傷病休暇を取得しかつ傷病休暇日数が医療期間内の場合、『労働契約法』第39条が規定する状況を除き、会社は労働契約を解除することはできません。労働者の傷病休暇医療期間を超えた場合、会社は法に基づき労働契約を解除することができます。このように、医療期間とは労働者に対する一種の特別な保護措置、傷病休暇とは会社の従業員管理の範疇に属するものということになります。
 傷病休暇を取得する際には、会社が指定する病院の『傷病休暇証明』提出のほかに、会社の『就業規則』に定める休暇申請のプロセスに従う必要があります。
 本件では、一回目の傷病休暇の際にすでに休暇申請プロセス違反があり、会社の注意により初めて事後休暇申請が行われました。二回目の傷病休暇では、病院による傷病休暇証明は発行されていたものの、これにより休暇申請義務が免除されるわけではなく、章さんが会社の休暇申請手続きを行わなかった状況は、明らかに会社の規則制度に対する違反となります。
法律制度、運用について正しく理解することにより、会社はリスクを低減することができ、より柔軟な人材運用が可能になります。コチは就業規則検証、作成等のサービスを提供しておりますので、随時お問い合わせください。