競業制限違約金を約定していない場合に賠償責任を負う必要があるのか?>
一度入社した社員にはできるだけ長く働いて欲しいと思いますが、様々な事情で退職する従業員がでることは避けられません。
退職するだけならいざ知らず、社内で身につけたノウハウや知識を持ってライバル会社等に移籍されたりした日には会社への打撃も少なくありません。そのような事態を防ぐために『競業制限』や『秘密保持協議』を退職する従業員と締結する会社がほとんどです。しかし、ただ締結すれば良いというわけではありません。今回はそんな事例をご紹介いたします。

【事例】
2012年9月1日、程さんはA社に入社し、技術カスタマーサービスを担当していました。労働契約で毎月給与として6,000元、また、『労働関係解除又は終了後、1年以内は、競業他社での就業及び他社に技術サービスを提供することができない。競業制限期間内において毎月給与の33%を競業制限補償金として支給する。』と約定しました。ただし、労働契約中に程さんが競業制限義務に違反した場合の違約金については、明確に約定されていませんでした。
2014年5月8日、程さんはA社に退職届を提出したため、A社はEMSにより程さんに“競業制限通知書”を送付し、通知には、『離職後、一年間は競業禁止義務を履行し、会社が毎月2,000元を競業制限補償として支給すること。もし規定の義務を履行しない場合、違約責任を負い、離職前年度報酬総額の3倍、即ち、人民元216,000元を違約金として全額会社に支払わなければならない。』と明記されていました。程さんの退職後、A社は約定事項に基づき、毎月競業制限補償を支給しました。
同年9月、A社は程さんが競業関係にある南京のB社で働いていることを発見し、書面で程さんに違約行為を停止し、継続して競業制限協議を履行すること、また、相応の違約責任を負うように要求しました。しかし程さんは少しも耳をかさず、引続きB会社で勤務していました。
2014年10月、A社は労働仲裁を申し立て、程さんに既に支払った競業制限補償金8,000元の返却と違約金216,000元の支払い、競業制限義務の継続履行を要求しました。程さんは労働契約で約定した競業制限義務において、違約金が約定されていなかったため、競業制限約定事項は無効な条項であると主張しました。

【審理結果】
本案件は仲裁と裁判で審理され、程さんが継続して期間満期まで競業制限義務を履行すること、また、A社が既に支払った8,000元の返還を命じられましたが、違約金に関するA社の訴えは却下されました。

【弁護士の見解】
本案件は主に競業制限の効力と競業制限義務に違反した場合の責任負担問題が関係している。
1.雇用単位と労働者が違約責任の内容を約定していないことは、競業制限そのものの効力に影響を与えない。
労働契約法』第23条の規定によると、労働者が競業制限義務を負う場合、双方の明確な約定を前提としている。
本案件で、A社と程さんは『労働契約』において競業制限の期限と競業制限補償金額を明  
確に約定しており、これは双方の真意を表しているため有効な約定である。違約責任を約定していないことは契約当事者の約定した内容の効力に影響を与えない。労働契約解除後、A社は約定事項に基づき、競業制限補償支払いの義務を履行したため、程さんも約定した競業制限義務を履行しなければならなかった。
2.労働者が競業制限に違反した場合の違約金負担については、双方の明確な約定が前提となる。
労働者が競業制限義務を履行することは雇用単位の重大な商業利益に関係するため、違約金の支払いという形式で労働者の義務の履行を担保する必要があり、違約金金額について、双方の明確な約定が前提となる。
本案件で、A社は程さんと『労働契約』の中において明確に競業制限に違反した場合の違約金を約定しておらず、会社は労働契約を解除した日に一方的に『競業制限通知』の形式で違約責任を告知した。これは双方の明確な約定ではなく、程さんに対して拘束力を持たない。それゆえ、A社は『競業制限通知』を根拠に程さんに違約金の支払いを主張することは根拠がないと言える。
ただし、A社が程さんが競業制限の約定に違反したことにより、会社にもたらした損失について証明することができれば、程さんは損害賠償責任を負う必要がある。
3.労働者違約金を支払った後でも、雇用者は引続き労働者に対して競業制限義務を継続履行するように要求することができる。
『最高人民法院の労働争議案件審理に関わる法律適用の若干問題への解釈(四)』第10条の規定では労働者が競業制限に違反し、雇用者に違約金を支払った後に、雇用者が労働者が約定事項に基づき競業制限を引続き履行するように要求した場合、人民法院はこれを支持するとある。もし、労働者違約金を支払うことにより競業制限義務を履行しないことを許可するとすれば、実質的に労働者がいつでも一方的に違反できること、及び不正な競争の合法性を承認することと等しいためである。
(出典:労働法律ネット)

日系企業において、従業員と『競業制限』を締結する会社は決して多くありません。多くの会社は従業員と『秘密保持協議』を締結します。では、『競業制限』と『秘密保持協議』の違いはどこにあるのでしょうか?
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