【案件】
2013年5月14日、蒋さんは某証券会社に入社して管理部投融資業務の高級経理を担当し、契約期限が3年間(2016年5月13日まで)の労働契約を締結しました。
2015年3月24日、蒋さんは会社に辞表を提出しましたが、会社は受理しませんでした。会社は蒋さんと会社が締結した『関連職位リスク予防、安全維持責任書』の規定に基づき、蒋さんは責任者である投資プロジェクトが継続している期間中は辞職できないという主張です。もし特別な事情があって辞職しなければならない場合、辞職の申請を提出し、辞職審査を完了した後、離職手続きを行うことができる、と主張しました。
2015年5月から、蒋さんは出勤しなくなり、会社は蒋さんの給与支給を停止しましたが、社会保険と公積金の納付は継続し、退職手続きを行いませんでした。
2017年2月、蒋さんは会社が退職手続きを行い、労働手帳を返却するようにという要求を労働仲裁に申請しました。

【争議の焦点】
 会社は従業員の辞職を拒否する権利があるのでしょうか?
 蒋さんは『労働契約法』の規定に基づき、労働者が30日以上前に雇用単位に通知すれば労働契約を解除できると考えていました。本人は30日前に会社に通知する義務を既に果たしているのだから、双方の労働契約は予告期間の満了と同時に解除される。会社は退職手続きを行い、労働手帳を返却するべきだ、という主張です。
 一方、会社は蒋さんは重要プロジェクトの責任者であり、このプロジェクトはまだ終了しておらず、リスクが存在している。もし、蒋さんがプロジェクト終了前に辞職し、将来プロジェクトにリスク責任が発生したときにだれも責任を負うことができない。蒋さんは会社と締結した『関連職位リスク予防、安全維持責任書』の中でもプロジェクト継続期間中は辞表を提出しないと承諾している。それゆえに、会社は蒋さんが申請した辞表を受理しないことは違法でなはない、という考えです。

【裁判結果】
仲裁委員会は審理を経て、蒋さんがすでに労働契約解除の事前通知義務を果たしていると認め、双方の労働契約は通知期間の満了をもってすでに解除されている。会社は蒋さんに対して法に従い退職手続きを行い、労働手帳を返却しなければならない、と命じました。

【弁護士の解説】
労働契約法』第37条規定によれば、「労働者は30日以上前に書面形式により雇用単位に通知することにより、労働契約を解除することができる。労働者が使用期間にある場合は、3日以上前に雇用単位に通知することにより、労働契約を解除することができる」とあります。つまり、労働者が辞職するときには、ただ30日以上前に書面形式により雇用単位に通知するというプロセスの条件を満たすだけで良いということです。中国は労働者による任意辞職モデルを採用していると言えます。同時に『労働契約法』第50条の規定によれば「雇用単位は労働契約を解除、あるいは終了した労働者に対して、労働契約の終了証明を発行しなければならず、15日以内に労働者の档案社会保険関係の移動手続きを行わなければならない」とあります。そのため、労働契約の解除後、雇用単位には速やかに労働者の退職手続きを行い、社保、公積金の移転手続きを行う義務があります。
本案件において、蒋さんが2015年3月24日に書面による辞職申請を提出しています。法律規定に基づけば、労働契約は2015年4月22日に正式に解除されます。それでも会社は蒋さんのために退職、離職手続きを行わなかったため、法律規定に違反しているとみなされました。