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上海は近代史の舞台で多くの歴史的な建造物があると聞いても、なかなか日常の生活で触れることが少ないと思われる方は多いのではないでしょうか?
私もその一人で長く上海に住みながら歴史に触れるチャンスはありませんでした。

コチのある淮海路界隈はフランス租界として有名なところです。
会社の道向かいにホテルがあり、そのホテルの奥に「淮海坊」という里弄があります。
週末に、歴史好きな友人に誘われて、その里弄を歩いていた時に、偶然なのですが80年近く住んでいる方と話すことができました。

里弄とは上海の集合住宅がひしめく路地裏で、1920年ごろから建築されています。その里弄の中には、煉瓦づくりの3階だての住宅が狭い路地に並んでいるのを見たことがある人も多いかと思います。メイン通りから一本入ったその路地裏に、経済発展したお洒落な上海の街と対照的に庶民の生活が色濃く映し出されています。今では観光地で有名な「田子坊」「新天地」もそうでした。

生まれた時から里弄に住んでおられるご主人は80歳近い方で年画の画家さんです。奥さんと結婚後もここに住み、子供を育て、8人兄弟の二人が同じアパートで今も一緒に住んでいます。昼間でも薄暗い部屋には当時の写真や絵が飾ってあり、家の中を見学させて頂き貴重なお話を聞くことができました。

このあたりはフランス租界でしたが、一番多く住んでいたのは白ロシア人で、この里弄の近所にロシア人と上海人は同じアパートで隣り合って暮らしていたそうです。当時、ロシア人との子供と仲良く遊んでいたことや、近所には多数のロシアレストランやパン屋があったことを教えてくれました。上海の家庭料理には、洋食としてロシア料理が浸透していたそうで、今も奥さんはボルシチスープ(中国語では羅宋湯)が得意料理で上海の家庭料理の一つになっています。トマトベースでつくる作り方を教えてくれました。

歴史に触れることがないと思っていた私も歴史好きな友人のご縁があって、素敵な出会いにとても感謝しています。同時に歴史の重みも感じています。

戦前の上海には多くの日本企業が進出しており、1940年代には最大で10万人以上の日本人が上海に住んでいました。当時の状況を知るにつれて、今の私たちが歴史をどう見つめ、未来へどのようにつなげていくのかを改めてかみしめました。
ともあれ、上海は新緑の季節で今が散歩にとてもいい季節です。
是非、プラタナスの美しい街路樹のもと、素敵な散策をしていただければと思います。

matsumura-sq-smalledit by 松村 扶美